掲示板法話「逃げることってカッコ悪い?」
モンスターが現れた!
ロールプレイングゲームでは、モンスターと遭遇したときに、「たたかう」「まほう」「にげる」「まもる」「アイテム」などのメニューからパーティーの行動を選択します。
雑魚モンスターであれば「たたかう」。ちょっと強そうなときには「まほう」「アイテム」。弱っているメンバーは「まもる」。ここまでの4つは、なんとか敵を倒すためのメニューです。しかし、「絶対に敵わない!」という絶望的な状況もあり、そのときに選ぶのが「にげる」。セオリーとしてはそのようなところでしょう。
ゲームのなかでは、「にげる」を選んでもみじめさを感じることはありません。ただし、逃げてばっかりで戦いを避けていると、レベルアップできず弱いままです。装備品を見直すとか、敵の弱点を調べるとか、なんとか倒す方法を探さなければ、いつまでもゲームをクリアできません。
「にげる」はカッコ悪くないけれど…
日々の暮らしの中でも、手ごわいモンスターによく絡まれるものです。
そのモンスターとは、ちょっかいをかけてくる友達だったり、平気でパワハラをしてくる上司だったり、小言をネチネチ繰り返す姑さんだったり、子供のクラスメイトの面倒くさいお母さん――まさしくモンスターペアレント!――だったり。いずれも、ゲームで遭遇するモンスターのように倒せばいいわけではなくて、仲良くしなければいけない相手なので厄介です。しかも、同じコミュニティに所属しているかぎりは、いくら「にげる」を試みても、ときには顔を合わせることが避けられませんから、「まもる」を選んで心に蓋をしてじっと耐える時間がなんどもやってきます。
「にげる」を選ぶのをカッコ悪いとは思いません。関わるとややこしそうな人を察知して、適切な距離を置くのも大事なスキルです。しかし、「にげる」ばかりでは状況の改善が望めません。逃げている自分を可哀そうに思って気に病んでしまうこともあります。やはり、なにかしら対策をとったほうがいいでしょう。
「たすけをよぶ」を習得しよう
人の重きを引くとき 自力にて前まざるに
傍らの救助を仮らば すなわち軽く挙ぐることを蒙る
天台教学を完成させたと言われる中国の僧・智顗(538-597)の言葉です。修行中の心構えを示したものですが、人生のあらゆる局面にもあてはまると思います。
自分の力ではどうしようもない壁にぶつかることがあります。そんなときに、他人に助けを求めることはなんにも恥ずかしくありません。助けを求めてもすぐに解決しないかもしれませんが、相談するだけで心は軽くなります。いつかは解決する糸口も見いだせるでしょう。
「たたかう」を選ぶか、「にげる」を選ぶか。この2択で悩みがちですが、ゲームと違って人生には「たすけをよぶ」という素晴らしいメニューがあることを、常に覚えておいてほしいと思います。