掲示板法話

掲示板法話「お坊さんはなぜ丸坊主なの?」

掲示板法話「お坊さんはなぜ丸坊主なの?」

個性を尊重する時代に

甲子園に出場する高校球児のヘアースタイルは、丸刈りがトレードマークと決まっていたのはもう昔の話。長髪を認める学校もだいぶ増えてきたようです。

悪行をはたらいたときに、謝罪として丸刈りにするという習慣も、ほとんど見られなくなりました。

個性を尊重する時代には、特定のヘアースタイルを強制するというのは、どうも合わないようです。そしておそらくそれゆえに、「お坊さんはなぜ丸坊主なの?」という質問を、最近よくいただくようになりました。いつまでもヘアースタイルの個性とは縁のないお寺の世界が、奇異なものに見えるのでしょう。

仏教とヘアースタイル

お釈迦さまが出家したとき、持ち合わせていた刀で髪を切り落としたそうです。仏教では昔から、頭髪というのは欲望の象徴でありました。だから、丸坊主にこだわるんですね。

ただし、厳密にいうと、すべてのお坊さんが、丸坊主ではありません。浄土真宗のお坊さんは、長髪にしているケースが多いです。これは、世俗の社会にいる人たちと同じようにヘアースタイルを気にして生きながら、一緒に仏教に向き合っていきたいという考えによるものです。

浄土宗では、お坊さんはお坊さんらしくあるべきだという立場を取りますので、丸坊主にしている人がほとんどです。でも、「頭髪の長さは何ミリ以下に」という具体的なルールがあるわけではありません。長髪にしている人もありますが、だからといって偉いお坊さんから叱られることもありません。おのおのでお坊さんらしくあろうと考えて、たいていは丸坊主に落ち着いているということになります。

余計なものを捨てる勇気

私自身も、丸坊主にしています。

中学生、高校生の頃は髪の毛を伸ばしていましたが、それ以降はずっと同じヘアースタイルです。仏教の精神を重んじているゆえですが、手入れが楽だし、自分で剃髪すれば美容院代もかからないから、というのも大きな理由です。

洗うのも、乾かすのもあっという間。朝に寝癖を直す時間も、ヘアーセットする時間もゼロです。冬の寒さが厳しいのは難点ですが、夏は涼しくて清潔感もあります。それになにより、髪の毛のことを考えなくていい、というのがとてもストレスフリーです。

私にとってみれば、丸坊主にしておくことによって、本当に自分がやりたいことに時間もお金も気持ちも費やせるわけですから、これほど個性を尊重するヘアースタイルはないわけです。仏教は良い習慣を作ってきたなぁと感謝に堪えません。

時代の流れも承知していますし、皆さんに丸坊主をおススメしようとは思いません。しかし、ヘアースタイルも含めなにもかもに個性を求めると、いちばんやりたいことからかえって遠ざかるかもしれません。余計なものはあっさり捨ててしまう勇気を、丸坊主のお坊さんからぜひ学んでください。