育児・家事・仕事のパズル
ひとり親家庭のタスクって、どうしても時間との戦いになる。
仕事、育児、家事のすべてが、どうしても私一人にかかってくるからである。すべて完璧にこなすのは絶対に無理で、ある程度は目をつぶらないといけないが、子供に可哀想な思いをさせたくはない。檀家さんにも迷惑かけるわけにいかない。そうなると、とことん効率化をはかっていくしかない。
効率化というのは、要するに無駄を省くことである。とりわけカギになるのは並行していくつものタスクをこなせるかである。たとえば、
「みそ汁のだしをとっている数分のあいだに、山門を開けてこよう」
「洗濯物を干すあいだに、たまごを茹でておいて明日の朝ごはんに食べよう」
などなど。
やり続けていると、段々、コツがわかってくる。お茶のやかんは5分ぐらいで沸く。 ゆで卵は10分ぐらいでできる。 洗濯機は40分ぐらい。炊飯器は50分ぐらい。この待ち時間をうまく利用して、仕事、育児、家事のパズルを組み合わせていく。
また、お寺は広いので、長い廊下を何往復もしなくていいように、本堂のお供え物、トイレのトイレットペーパー、洗濯物やごみ箱など、ついでに運べるものを絶えず考える。さらには、調理しているときはあまり頭使わないので、
「ご飯できあがるまで勉強見てあげるから、ここで宿題しなさい」
というパズルもある。そんな些細なことの積み重ねをずっとやっている。
前のブログで、お葬式から帰って、子供たちと昼食をとった後に、初七日に再び出かけていく話を書いた。これもまさにそうである。葬儀の読経が終わったあと、遺族と一緒に火葬場に行く。そして、遺族が収骨まで待機しているあいだ、私はいったんお寺に戻る。お寺到着からだいたい1時間強ぐらいで、電話が鳴って「初七日法要に来てください」と言われる。
この1時間強という時間を把握できていると、うまく活用する方法が考えられる。先日の場合、ちょうどお昼時だった。食事を一緒に取るのに20分ぐらい、片付けに20分ぐらいである。そうすると、20分ぐらいで調理できるメニューを作ろう、ということになる。
だが、効率化ではどうしようもないときもある。
葬儀の会場が遠方であれば、初七日のおつとめが終わるまでお寺に戻れない。朝余裕があれば昼ごはんの支度を済ませて葬儀に向かうが、だいたいはスタッフに「子供たちとご飯一緒に作って」と任せてしまう。スタッフは嫌がらずやってくれる(これは本当にありがたい)けれど、本来、お寺の仕事を任せるために雇ったスタッフである。あまり育児家事で頼り過ぎるのも筋の違う話かな、と思っている。
一日のタスクがうまくいくと、夜にひと息つける。そういうときは、お風呂上りのまったりした時間、子供たちと「集まれ!どうぶつの森」をやっている。でも、まったりしてばかりはいられない。この時間、洗濯物が出来上がるまでの待ち時間でもある。洗濯完了の音が鳴れば、コントローラーを子供たちに渡して「ちょっとやっといて」とお願いする。洗濯物を干し終わったら、再びコントローラーを握る。そうこうしているうちに、子供たちの就寝時間。
そのあと、ようやく静かな時間が手に入る。「お酒飲んで一息つきながら、まったりと原稿でも書こう」と頭のなかでは考えているのだが、お酒を飲むと一気に力が抜ける。「締め切りまでもう少しあるからぼちぼちやろう」と、お酒だけが進んでいく。そしてまた朝が来ると、原稿書く時間などどこにも見当たらない。ひたすら育児、家事、仕事のパズルが始まるのである。