お寺の日々冥土喫茶ぴゅあらんど

✟ 第6回★「日本は沼?信仰の土壌と宗教のかたち」開催レポート

✟ 第6回★「日本は沼?信仰の土壌と宗教のかたち」開催レポート

2017.06.10(土)  天気:晴れ☀  記:メイドくーたん

ゲスト:白波瀬達也氏
関西学院大学社会学部准教授
1979年京都府生まれ。社会学博士。専門社会調査士。社会福祉士。
2007年から2013年にかけて地域福祉施設「西成市民館」でソーシャルワーカーとして活動。
専門は福祉社会学・宗教社会学・質的調査法。
論文「あいりん地域における居住支援――ホームレス支援の新たな展開と課題」が2016年度日本都市社会学会若手奨励賞を受賞。
著書『宗教の社会貢献を問い直す』(ナカニシヤ出版)、『貧困と地域』(中公新書)
共著『ホームレス・スタディーズ』(ミネルヴァ書房)、『宗教と社会のフロンティア』(勁草書房)、『釜ヶ崎のススメ』(洛北出版)など

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今回は、大阪市西成区にある「あいりん地区」(通称 釜ヶ崎)を舞台に
宗教と社会貢献の関係についての研究をされている白波瀬達也さんをお迎えしました。

地域の性質、そこにいる人々の性質、そして、そこで受容される宗教のかたちについて。
キリスト教の「伝道教会」を主軸に、宗教があいりん地区でどのように受け入れられているのか、
白波瀬さんが実際にフィールドワークと研究により得た知見を1時間ほどお話していただき、
その後1時間、会場を交えたトークセッションを行いました。

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著書における明快で緻密な語り口そのままのトークで、地域の成り立ち・歴史から、現在の状況に至るまで、
非常に丁寧にお話してくださいました。
「地縁・血縁の薄れた社会」「高齢化・多死社会」である「あいりん地区」は、
この先の日本を占う場であると考えられる、と白波瀬さんは仰います。

「一つのところに縛られるのが嫌だ」という考えを持つ彼らは、
特定の教会に所属しようとせず、食事や衣服の提供に応じて「教会のハシゴ」をするそうです。

また、「個人の信仰」と「家の宗教」を分けて考えた時に、
後者としての性質が強い日本仏教は、単身者の多いこの地域では根付かないといいます。
一方で、人の「死」に際した時には仏教の思想が求められ、慰霊祭は仏教とキリスト教が協働して行われるそうです。

どこにも所属せず、市政や福祉などのセーフティーネットに掬われなかった彼らが「救い」を得る方法とは。
帰属集団を持たず、浮遊する個人は、なにを拠り所とするのでしょうか。
私自身も、なにかに所属するということに抵抗を覚える若者代表として、考える所が多くありました。

会場を交えたトークセッション・質疑応答では、白波瀬さんにセレクトしていただいた
BGM(https://www.discogs.com/ja/Mono-Fontana-CIRUELO/release/9283128)をバックに、
皆様に自由に発言していただきました。

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わたしが白波瀬さんの本を読み、さらに話を聞いて気になったのは、
「サービス」という単語がたくさん出てきたことです。
教会での食事・衣服の提供、また、人の死に対する「慰霊」もある意味サービスかもしれません。
前回扱った上座部仏教における修行プロセスの話を思い出し、ブッダが最初に悟った内容、人類に対する「救い」や、
チベット仏教・ユダヤ教の回で扱った共同体としての「善」など、
これまでのぴゅあらんどで触れてきた「宗教」とはまた性質を異にするもののように感じたのです。
そう考えた時に、偶像崇拝はどやねんとか、免罪符はどやねんとか、「正しい宗教を主張する人々」と、「サービスとしての宗教を享受する人々」の間の、埋められない段差のようなものも感じます。

「ニーズ」と、それに対して生まれる「サービス」。
「需要」と「供給」と言い換えてもいいかもしれませんが、それは短期的な欲望の充足です。
会場の方から「コスト」に関する話も出ましたが、
コンビニの「ごほうび系」スイーツや、LINEスタンプ、スマホゲーム等、
人々がより安易に得られる(コストのかからない)快楽を嗜好する姿になんとなく重ねてしまいました。

慢性的に「満たされなさ」を抱えて生きる人類にとって、
それが短期的であれ長期的であれ、相対的であれ絶対的であれ、
「満たしてくれるモノ」に出会った時の引力は歯止めが効かない類のものなのかもしれません。

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トークセッションは白熱し、閉店時間が近づいても問いが尽きませんでした。
是非とも、今回処理しきれなかった疑問や見識が、日常生活・社会生活において考えるきっかけになれば幸いです。
「問いが立つ」ということの尊さを思いながらの閉会となりました。

★次回:8月26日(土)開催。
波勢邦生(キリスト教研究者)×メイドくーたん
これまでの回の総集編となります!

①キリスト教(宗教のリアル、オタク、サブカル)
②チベット仏教(共苦と情、個別主義と普遍主義)
③ユダヤ教(共同体としての正義、個人の信仰)
④イスラム教(現代における信仰)
⑤テーラワーダ(修行、聖と俗、瞑想と芸術)
⑥キリスト教(伝道教会、社会との接点)

これまで扱ってきたさまざまな宗教現象をつなげながら、
改めて「宗教と社会の交差点に立って」現代における宗教のありかたについて考えたいと思います。
主要宗教の概略もざっくりとさらえるので、はじめて宗教に触れるという方にもおすすめです!

こちら(https://ryuganji.jp/events/pureland007/)からお申込み下さい。