檀家紀行

【田中鰹節店】毎日朝から鰹節を作り出汁文化を支えてきました

【田中鰹節店】毎日朝から鰹節を作り出汁文化を支えてきました

龍岸寺の檀家さんを訪ねて歩く「檀家紀行」。4回目の訪問先は、老舗の鰹節店「田中鰹節店」。
京料理を味わうときの楽しみのひとつが、出汁の味。そして、いい出汁を取るために欠かせないのが、美味しい鰹節。
今日も京都の町の片隅で鰹節は削り続けられています。

東寺の南大門から九条通りを西に進むこと五百メートル。かつて平安京の羅城門があった跡地まで来ると、ほのかに鰹節の香りが風に漂ってくる。

田中鰹店の創業は昭和11年。90年以上にわたりこの場所で鰹を削り、京都の出汁文化を支えてきた。

現在、店を切り盛りするのは、3代目の田中正勝さん(81)、八重子さん(78)ご夫婦。昭和61年に店を継ぎ、仕事ひとすじに暮らしてきた。早朝から鰹の荒節を蒸して柔らかくし、午前中のうちに「鳥羽式(とばしき)」と呼ばれる専用の機械で削り節を作り、午後は市内の料亭などに配達に行く。店頭でも販売している。毎日30キロの鰹節を削る。

鳥羽式機械3台が並ぶ

田中鰹店のこだわりは、「薄さ」である。鳥羽式機械に据え付けられた12枚の超鋼刃を研ぎ、どの刃でも均質に薄く削れるように調整する。正勝さんは「この技術を習得するのに5年かかった」と語る。削り出された鰹節は、向こうが透けて見えるほど美しい。口に入れると舌のうえで鰹がとけて風味がふわっと広がっていく。

「削り立てはやっぱり味が違う」とお店のファンは多い。薬味や出汁に使うのもいいが、そのまま醤油をかけて食べても絶品だ。また最近は、鰹節のほかに昆布などを加えた、百パーセント天然素材のオリジナル出汁パックも好評だという。ネット注文も可能だ。

先代の夫人は、昨年1月に百四歳で天寿を全うする半年前まで、店頭に立っていた。お店のお客さんは、その姿を口々に懐かしむ。田中鰹店の風景は、京都の暮らしのなかに、深く根付いている。

手作りの出汁パック
田中正勝さん、八重子さんご夫婦

田中鰹節店

住所:京都市南区唐橋羅城門町55
電話:(075)691-6033
https://tanaka-katsuobushi.com/

営業時間:9時〜18時(日・祝日除く)

※ この記事は、「ファン通信」Vol.14に掲載されたものです。