掲示板法話

掲示板法話「怒りはどうしたらおさまるの?」

掲示板法話「怒りはどうしたらおさまるの?」

お坊さんもときには鬼に

2月といえば節分。節分といえば鬼です。

いつも心穏やかに笑顔を絶やさずに暮らしていれば、「いいお坊さん」と慕われるのかもしれませんが、私だって人間です。鬼になってしまうときがあります。

すでにご存じの方もあるでしょうが、私はシングルファザーとして2人の子供を育てながら、住職の仕事をつとめています。どうしても、日々のタスクは過密になります。しかし、忙しすぎてイライラしていても、子供たちは気を遣ってくれません。お葬式に向かう日の朝など、私の緊張感はマックスまで高まっているのに、子供たちはおかまいなしにスヤスヤ…。2度、3度、起こしに行っても起きなければ、雷がドカーン!

ちなみに、そんな波瀾万丈の日々を、昨年7月から新潮社のwebマガジン「考える人」に、「住職はシングルファザー!」というタイトルで連載中です。ぜひお読みください。

6秒ルール

怒りの感情と付き合うための心理トレーニングを「アンガーマネージメント」と言います。そのメソッドとしてよく語られるのが、「6秒ルール」です。相手から嫌なことをされてカチンときても、そのときに反射的に言い返して罵ったり、あるいは暴力的な行為に及ぶのではなく、ぐっとこらえて「1、2、3…」と6まで数えてみてください。6秒待っても簡単に怒りはおさまらないかもしれませんが、怒りの沸点でぶつかり合うのを避けられれば、ずいぶん傷は浅くなるはずです。

空を見よう!

仏教では、怒りをおさえるメソッドを、どう説くのでしょうか。

『阿閦仏国経(あしゅくぶっこくきょう)』に説かれるエピソードを、要約してご紹介します。

昔、あるところに修行僧がいました。その修行僧は、どんな不快な思いを受けても、人間はもちろん、あらゆる生き物に怒りを抱くことはありませんでした。その性格ゆえに、彼は「阿閦(=怒らない)菩薩」と呼ばれました。
阿閦菩薩は、やがて修行を完成させてブッダとなり、はるか東の国からいまも私たちを見ています。もし、あなたが会いたいと思うなら、空を見あげなさい。そこに、やさしい眼差しを感じるでしょう。

「6秒ルール」ではなく、「空を見るルール」です。面白いなと思いました。カッとなったとき、空を見上げ、怒りをついに抱くことがなかったブッダの眼差しを感じると、いくらか平静を取り戻せることでしょう。

私たちは多くの目があるところでは、自制心を保とうとします。家庭内のネグレクトや虐待などをはじめ、他人の目が行き届かないところで事件や事故が起こります。もし私たちが、日頃から手を合わせて仏さまを拝んだり、空を見上げて神仏の眼差しを感じたりできれば、この世界は平和に包まれると思うのです。