心も身体も美しく生きる~脱ぐ覚悟で身体が変わる~
今年2月9日。つまり「肉」の日。
身体を鍛えたモデルを如来(仏)のポーズで撮影した
筋肉写真展「NYORAI」が本堂で開かれた。
文=池口龍法(龍岸寺住職)
脱ぎませんか?
展示前日。美しく鍛え抜かれた筋肉のパネルを並べながら、フォトグラファーの小田やすはさんが私(住職)に語りかけてきた。
小田「住職も脱ぎませんか?」
住職「いや、身体鍛えてないんで…」
小田「みんな最初はそう言うんです。でも撮影される覚悟を決めたら、変わります。その日に向けて鍛えるからです」
こんなに露骨に、同年代の女性から身体を狙われるのは人生で初めてだ(笑) 小田さんが私を見る目はキラキラしていて、どうも冗談ではなさそうだ。「覚悟が決まれば生き方が変わる」なんて法話みたいで妙に説得力がある。ここは一肌脱ごうかと思ってしまう。
いまのところ、脱ぐ覚悟は決まっていない。でも、小田さんとの出会いから、心と身体のことを真面目に考えるようになった。
身体をストイックに限界まで追い込もうとするなら、強靭なメンタルが欠かせない。そう考えるなら、心身をともに鍛えるというのは、案外仏教的な営みといえる。
身近なところでも、ご年配の檀家さんが「歩かなあかんのわかってんねんけどな…」とぼやく声をよく聞く。健康を保つために必要なのは、「めんどくさい」「しんどい」という邪念を戒める力なのである。
筋肉の展示がしたい
小田さんからコンタクトがあったのは、去年の10月だった。「筋肉をテーマにした写真展示がしたい」と。なかなかパンチ力のあるオファーだ。「他のお寺にも相談したら、龍岸寺さんを薦められたんです」と。オイオイ…(笑)
小田さんの希望は2つ。
1つは、スポーツジムに通うなどして鍛えている人が、如来のポーズをして心も穏やかになった姿の写真を、本堂に展示したい。
もう1つは、見に来てくれた人たちに、住職から直々に瞑想指導をしてほしい。
そんなわけで瞑想指導したのが上の写真である。モデルをつとめた人やジムのトレーナーなど、日頃お寺慣れしてない人ばかりだったが、かなり好評だった。身体に向き合っている人は、心にも向き合っているように感じた。
筋肉とは大自然そのもの
小田さんがもっとも好きなのは、手首から肩にかけての筋肉だという。力こぶはそびえたつ山脈、浮き出た血管は水脈。鍛えられた身体は、さながら大自然に見えるらしい。
正直、まだ共感できない(笑)
でも、身体をそれほどまでに美しいと思える気持ちは素敵だと思う。
人生百年時代には、健康寿命を長く保つことが大きな課題であり、その大きな支えになるのが筋肉であることは言うまでもない。当たり前のように使っている筋肉に、少し愛情をもって接してほしい。
そして、この文章を読んで、「今日から鍛えたい」と思った方は、撮影を依頼してみてはどうだろう。新しい世界が待っているはずだ。
そこまでの勇気が踏み出せない方も、目標や覚悟をもって身体を鍛えることを、この機会に考えてほしいと願うのである。
※ この記事は、「ファン通信」Vol.13に掲載されたものです。
筋肉美専門のフォトグラファー
小田やすは
写真歴約13年。オーストラリア、メルボルンのアート専門学校で2年間写真の技術を学ぶ。帰国後、東京でフォトグラファーアシスタントとして3年修行する。現在はフリーランスフォトグラファーとして兵庫県神戸市を拠点に活動中。
2016年、ウェディングフォトアワード 金賞受賞。国内・台湾・ハンガリーで個展やグループ展に参加
撮影依頼やお問い合わせはホームページより。
https://yazphotography.info/